AIが頼んでもいないファイルまで書き換えた夜、副業エンジニアがGitとチケットで組み直す暴走封じ込め3層

AI活用

「AIに任せたら壊れた」を副業のAI運用者が繰り返す理由

AIに機能追加を頼んだら、頼んでもいないファイルまで書き換えていた。しかもテストは通っている。自分は副業でAIエージェントの自動化システムを回している現役エンジニアで、この「勝手に触られる」体験を何度もやらかしてきた。

原因は、AIのプロンプトが悪いのではなかった。プロンプトをどれだけ工夫しても、確率的に動くAIは隙あらば「関係ありそうな箇所」まで書き換える。これは性質であって、しつけで直る話ではない。

本当に効くのは、AIの行動範囲そのものを構造で縛ること。Gitとチケット(Issue)を使って、逸脱できない仕組みを先に作ってしまう。この記事では、Qiitaで公開されたtokudiro氏の論考「AIの暴走を物理的に封じ込める【Git × チケット駆動】のクローズドループ開発」を起点に、自分が副業運用で体感している『構造で守る』考え方を書き残す。tokudiro氏はAIを業務パイプラインに安全に組み込むための構造を、『思考の制御』『表現の制御』『状態の同期』という3つの柱として整理している。タイトルの『3層』はこの3柱を指す。

賢い指示より先に、壊せない仕組みを作る

副業でAIエージェントを回していると、賢いプロンプトを書く時間と、AIが壊した箇所を直す時間の比率が逆転してくる。「もっと丁寧に指示すれば防げるはず」と思って毎回プロンプトを膨らませ、それでも壊れる。3時間かけた仕組みが5分で壊された経験は何度もある。泣いてない。

tokudiro氏の記事が示しているのは、この構図をひっくり返す発想だ。「AIを賢く動かす」のではなく、「AIが暴走しても被害が出ない構造を作る」。制御工学の言葉を借りて、フィードバック制御系としてプロセスを組み直す。目標値がチケット、操作量がAIの生成する差分(git diff)、制御対象がGitリポジトリ。これがクローズドループ開発の骨組みになる。

自分が最初にこの発想に切り替えたきっかけは、文字コード事故だった。AIエージェントが生成したファイルにBOM(Byte Order Mark: 一部エディタが冒頭に付ける不可視の目印)が混入して、他のスクリプトが読み込みに失敗する。1件直しても、また別のファイルで再発する。プロンプトに「BOMを付けるな」と書いても、確率で貫通してきた。

同じバグを何度も踏んで気づいたこと

結局やったのは、pre-commitフック(コミット直前に自動実行される検査)とeditorconfig、gitattributesを組み合わせた構造防御。AIが何を生成しようが、コミット直前で機械的に弾く。プロンプトのしつけをやめて、Gitの入り口に関所を置いた。これで文字化け事故は止まった。

同じことがasyncioのevent loop汚染でも起きていた。Pythonの非同期処理を扱う土台の部分で、日をまたぐ処理が過去の実行状態を引きずって落ちる。原因を追ってもAIの生成コードは毎回微妙に違い、根絶できなかった。最終的に実行環境側で処理単位を分離する構造に変えたら、再発が止まった。賢く指示するより、壊れない構造を用意する方が、確実に安く済む。

タスクを1つに絞ると、AIの逸脱が止まる

AI駆動開発でチケット(Issue)を切る意味は、人間のプロジェクト管理と全く違う。人間のエンジニアはチケットの外に手を出さない常識を持っている。AIは持っていない。局所最適を取りにいくと、全体を破壊する差分を平気で出してくる。

だからAIには「今アクティブな単一のチケットだけ」を与える。仕事は「そのチケットを満たす最小の差分を出すこと」に限定する。範囲外に触れた差分は、レビューで機械的に落とす。ここでのレビューは、性善説の最終確認ではない。AIの暴走を前提にした検閲ゲートだ。

自分の副業運用でも、これに近い切り分けをやっている。品質チェックの誤検知が5回連続で出た時、原因は『AIに与える判断範囲が広すぎた』ことだった。判定対象を直近の1件だけに絞り込むように条件を狭めた瞬間、誤検知が止まった。AIは絞り込みが甘いと必ず外へ出ていく。逆に、境界線が物理的に引かれていれば、その中で真面目に働く。

チケットの粒度は「AIが1回で終わらせられる小ささ」に切る。1チケット=1目的=1差分を守ると、レビューの負荷がガクッと下がる。逆に『ついでにあれもやっといて』を許すと、レビュー不能な巨大差分が返ってきて手が付けられなくなる。ここは経験則として強く効く。

出力を検閲するのは人間、状態を確定させるのはGit

チケットを絞っても、AIの出力そのものが正しいとは限らない。ここで機能するのが、Gitを「状態確定の唯一の関所」として置く設計だ。AIは生成するだけ、コミットするのは人間。この非対称性が、暴走を物理的に止める。

tokudiro氏の記事では、これに加えて表現の制御(2つ目の柱)も提案されている。AIには純粋なMarkdownやソースコードだけを出させて、PDF化やレイアウト調整はCI(GitHub Actionsなどの自動化パイプライン)に任せる。Viewの生成をAIではなくCI側のスクリプトに委譲することで、AIの気まぐれによるレイアウト崩れを構造的に排除する、という設計だ。

自分の運用でも、AIに書かせるのはMarkdown本文までにしている。装飾や配信整形は決定論的なスクリプトが握る。この境界を曖昧にした時期は、毎回微妙にフォーマットが違う出力が積み上がって、後で正規化するコストの方が高くついた。『AIに全部任せる』の甘さを、Gitの差分で毎回突きつけられる構造にしておくと、無駄な自由度は自然に減る。

さらに、この設計にはドキュメント同期のおまけがついてくる。ソースコードとドキュメントが乖離して腐る問題は、Gitで管理された純粋なテキストとして扱えるようになれば、AIに『最新の差分に追従してドキュメントを更新しろ』と命じるフローが組める。いわゆるDocs as Code(ドキュメントもコードと同じようにGitで管理する運用)の体制が自然に立ち上がり、仕様書がハルシネーションで劣化しにくくなる。

構造で守った後に伸びるのは、レビューする力

「AIの出力速度に人間のレビューが追いつくのか」という懸念は現実的にある。ただ、ゼロからタイピングしていた時間を全部『チケット化』と『レビュー』に回せるようになるので、スループット自体は上がる。自分の副業運用でも、書く時間より『何を作るか決める』と『出てきた差分を判定する』時間の方が長くなった。

構造で暴走を封じた後、価値が出るのはこの『判定する力』の方だ。AIが速く量を出すほど、レビュー側の目利きが利益率に直結する。逆に言えば、レビューできない粒度でチケットを切っている限り、AIの速さは損失にしかならない。副業で稼げないと感じる時、原因はAIの性能ではなく、レビュー可能な粒度に落とせていないことがある。

エンジニアの主務は『ゼロからコードを打つこと』ではなくなる。チケットとGit履歴という記憶をAIに与えて、出てきた差分を監査して、次の状態として確定させる。この『コンテキストの管理者』に軸足を移せるかどうかで、AIを使った開発の採算は分かれる。気づいたんですよ。遅すぎたけど。

まとめ

– AIの暴走はプロンプトのしつけでは止まらない。Gitとチケットで構造的に封じ込める発想が要る – 1チケット=1目的=1差分の粒度を守り、範囲外の変更は検閲ゲートで機械的に落とす – 見た目とデータを分離し、状態確定はGit、装飾はCIに任せると、AIの気まぐれが構造的に排除される – 構造で守った後は、レビューする力(判定・目利き)がスループットと利益率を決める

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