MCP講座を2つ受けても1行も書けなかった。Claude×GitHubで貫通プロジェクトを1本通す副業設計

AI活用

MCPの講座を最後まで見終わった瞬間、ToolもResourceもPromptも口では説明できるようになっていた。でも、いざエディタを開くと指が止まる。そんな経験で止まっている人は多い。

自分は10年以上現役でコードを書いていて、最近は副業で AI エージェントを自作運用している。新しいプロトコルを覚えるたびに思うのは、知識量と「作れる」の間には深い谷があるということだ。MCP も例外じゃない。

結論を先に置くと、その谷を渡す橋は 触る範囲を端から端まで広げること にしかない。小さくていいから、入口から出口まで通る 1 本のプロジェクトを作り切る。これをやった人とやってない人で、半年後の単価帯がガラッと変わる。

講座を受けても作れない壁は、知識じゃなくて『触る範囲』にある

講座は親切設計だ。Tool の章があり、Resource の章があり、Prompt の章がある。1 章ずつ理解すれば、その章の概念は説明できるようになる。これは正しい教え方なんだけど、副作用がある。頭の中で部品がバラバラに置かれた状態で講座が終わる。

実物のシステムは違う。GitHub から webhook が飛んできて、サーバーがリクエストを受けて、LLM にツールを呼ばせて、結果を整形して、別のサービスに投げる。この 1 本の流れに、Tool・Resource・Prompt が 同時に登場する。バラバラに覚えた部品を、ここで初めて 1 つの装置として組み立てる必要が出る。

部品の名前を覚えるのと、部品を繋いで装置を動かすのは、別のスキルだ。前者は数時間でも届くけど、後者は手を動かさないと永久に届かない。料理本を全部読んだけど一度も鍋を握ったことがない人は、家族の夕食を作れない。それと同じ構造だ。

元記事の著者の hugoferro 氏も、まさにこの壁を自覚していた。Anthropic と Hugging Face の MCP コースを 2 つ通しで受講して、最後の動画を見終わった時点で 自分のコードは 1 行も書いていなかった と書いている。Tool とは何か、Resource とは何か、Prompt とは何か、全部説明できる。でもエージェントシステムをゼロから組めるかは分からない。そこで「確かめる方法は 1 つしかない」と動き出した。

この自己診断ができる人は強い。「説明できる ≠ 作れる」と切り分けられた瞬間、次の一歩が明確になる。あいまいに「もう少し勉強してから」と言い続けている間は、触る範囲がいつまでも広がらない。

MCPを1本通しで触ると、ToolもResourceもPromptも『役割の違い』で腑に落ちる

概念を別々に覚えていると、どこで何を使うか判断する時に毎回迷う。「これは Tool にすべきか Resource にすべきか」が、答えではなく好みの問題に見えてしまう。1 本通しで触ると、この迷いがほぼ消える。

hugoferro 氏が題材に選んだのは、GitHub リリースが publish された瞬間に webhook を受け、Claude が生のチェンジログを読んで整ったリリースノートに書き直し、ReportLab で PDF を生成して、Discord チャンネルに直接配信するパイプラインだった。20 パートに分けた README として、手順を最初から最後まで人に教えるつもりで書いている。

ここで Tool は「外の世界に副作用を起こす行為」を担当する。Discord に投稿する、PDF を生成する、GitHub の API を叩く。動詞 だ。Resource は「LLM が読みたい素材」を担当する。チェンジログの本文、過去のコミット履歴、テンプレート。名詞 に近い。Prompt は「この素材をこういう方向で読め」という指示書を担当する。役割を分けて装置を組むと、どの登場人物がどの仕事をしているかが、説明じゃなく 手触り で分かる。

この腑落ちは、講座を 3 周しても起きない。1 本通すと 1 回で起きる。安いコストで効くから、最初にやるべき投資はここだ。

サーバー側・クライアント側・LLM側で見える景色がそれぞれ違う

もう一段深い話をすると、同じ MCP でも立っている場所によって見えている景色が違う。

サーバー側: Tool / Resource / Prompt を「外に公開する」立場 クライアント側: サーバーに接続して、提供されたものを「呼び出す」立場 LLM 側: tool_use_id で呼び出しと結果を「紐付ける」立場

hugoferro 氏が「tool_use_id がなぜ大事か説明できないなら、本当には理解していない」と書いていたのは、ここに直結する。LLM が複数のツール呼び出しを並行して出した時、どの結果がどの呼び出しに対応するかを ID で固定しないと、対話が壊れる。これはサーバー側の設計図を眺めていても気付かない。クライアント側で実際にレスポンスを受け取って LLM に戻す処理を書いた瞬間、必要性が肌で分かる。

自分の手元でも、自作の知識管理用 MCP サーバーをローカル環境で常駐起動させて、Claude Code から直接呼び出せるようにする仕組みを組んだ。サーバー側のコードを書いている時は「Tool を公開する」感覚しかないんだけど、クライアントからの呼び出しを実装した瞬間、初期化のタイミングや stdio の流れ が全部 1 本に繋がって見えた。バラバラに勉強していた時には絶対に来なかった視界だ。

通したから見える、というのはこういうことだ。実装して、テストして、待って……動いた。短文を畳みかけたくなる瞬間が、講座のどの章にもない場所で待っている。

小さな貫通プロジェクトは、受託案件の練習場として一番安い

ここから先は AI × ものづくり領域で独立や副業を狙っている人向けの話になる。MCP を「とりあえず触っておく」ことの実利を、もう少し計算高く考えたい。

大きな受託案件をいきなり取りに行くと、技術リスクが詰む。一方で勉強だけ続けても、ポートフォリオが残らない。間を取る最適解が、小さくても端から端まで通った貫通プロジェクト を 1 本作って、それを公開しておくことだ。

hugoferro 氏の MCP リリースノート配信ツールは、機能としてはシンプルだ。GitHub → Claude → PDF → Discord。たったこれだけ。でも、これを 20 パートの README にまとめて公開しているという事実が、技術的な深さよりも遥かに強いシグナルになる。「この人は端から端まで責任を持って繋げる」と一目で伝わるからだ。受託で発注する側が一番不安なのは、途中で技術が止まることであって、最先端じゃないことじゃない。

さらにこの方式は、自分の理解の穴を炙り出してくれる。教えるつもりで書くと、「ここは何となく動いているけど説明できない」というポイントが必ず出る。これを 1 つずつ潰すと、その領域での実装力がきれいに底上げされる。3 時間かけた章が 5 分の読書で済む読者には申し訳ないけど、書く側のリターンは大きい。

あと、案件化を考えるなら ターゲット領域を絞った貫通プロジェクト にすると効果が跳ねる。汎用的なリリースノート配信ツールよりも、たとえば「Unity プロジェクトのアセット更新を MCP 経由で AI に整理させて Notion に書き戻す」のように、自分が取りたい案件の周辺を最初から狙う。練習場と営業資料を兼用させる発想だ。

AI × ものづくり領域でMCP一本通しが効く具体的な接続先

creator 軸で動いている読者なら、MCP 一本通しの経験は次の領域で直接的に効く。一般論じゃなく、案件として出てきうる接続先を具体的に並べておく。

Unity × LLM の NPC 会話。Unity の C# から MCP サーバー経由で LLM に話しかけ、応答を NPC のセリフに流す経路は、ゲームジャム規模でも企業案件でも需要が増えている。会話履歴を Resource として渡し、行動決定を Tool として呼ばせる設計は、まさに MCP の役割分担と相性が良い。自分で 1 本組んだ経験があると、設計レビューで具体的なツッコミができる。

VRChat ワールド × AI キャラ常駐。OSC や外部 API を経由して、ワールド内のキャラクター挙動を LLM に駆動させる構成は、MCP で整理し直すと拡張性が一段上がる。新しいツールやサービスを足したい時に、共通プロトコルで繋いでおくと毎回独自実装する手間が消える。

AIVTuber の周辺ツール統合。OBS、わんコメ(OneComme)、各種音声合成、メモリ管理、配信ログ集計、外部 API。AIVTuber のバックエンドは異種ツールの寄せ集めになりがちで、MCP で抽象化しておくと差し替えが楽になる。配信者からの「これも繋ぎたい」が来た時に、対応コストが見積もれる側に立てる。

Godot や UE などゲームエンジンへの汎用組み込み。エンジン側で MCP クライアントを 1 つ持っておけば、AI ツール側の進化に追従しやすい。長期保守の案件ほどここが効く。

この分野は、AIVTuber 開発支援・AI NPC 実装受託・VRChat ワールド受注・Unity × LLM 連携実装といった案件が、今まさに動き始めている。小さくても貫通プロジェクトを 1 本持っている人から順に声がかかる構造なので、早めに手を動かしておくと独立の武器になる。

まとめ:手を動かす範囲を『端から端まで』にした人だけが次の単価帯に行く

3 行にまとめる。

講座で知識は十分に揃う。詰まるのは知識じゃなく触る範囲だ 小さくていいから入口から出口まで通る 1 本を作り、教えるつもりで文章化する 通した範囲が、そのまま次の単価帯への切符になる

MCP は単独の技術トピックじゃなくて、AI と外の世界を繋ぐ共通言語になりつつある。今のうちに 1 本通しの感覚を握っておくと、来年の案件選びで選択肢の幅が違ってくると思う。すごく。

参考

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