XRデバイスを触りたいのに、どれを買えばいいか分からず数ヶ月止まる人は多い。自分は副業でAIエージェントを運用していて、デバイス選定で詰まった時に『空間の深さ』と『AIの噛み合い』の2軸で見直したら、選び方の筋が通ったことがあった。この視点で2026年現在のXRデバイスを棚卸ししておくと、UnityやVRChatでAI連携を作りたい開発者にとっては、作るものを決める前にやるべき準備が見えてくる。
2026年9月に大阪で開催された『XR Kaigi Hub 大阪 2026』で、大阪駆動開発コミュニティの宮浦恭弘氏(Microsoft MVP)がこのテーマを整理していた。本稿はそのセッション「XRデバイス開発、最近やってますか? — 2026年の動向と、触ってわかった実装の話」の内容を手がかりに、個人開発者・受託エンジニア視点でどこに賭けるかを考える。
スマートグラスとVR/MRデバイスは、同じ『XR』でもAIとの噛み合い方が違う
まず押さえておきたいのが、ひとくちに『XRデバイス』と言っても、設計思想がまったく違う2系統が並走しているという事実だ。
片方はAIグラス系。RokidやEven G2、GUIDE01のような軽量デバイスで、歩きながら情報を受け取る日常使いが想定されている。空間に出せるのは文字情報が中心で、本格的な3D空間を描画する力は持たない。その代わりAIとの連携が厚い。
もう片方がXRデバイス系。Meta Quest 3、HoloLens、MiRZAなどの6DoF(頭の位置と向きを同時に検出する方式)対応機だ。空間認識センサーが高度で、没入体験を作れる。ただし現状はAI連携が薄く、価格も高くなりがちだ。
ここで「同じXRでいいじゃん」と思うじゃないですか。自分もそう思ってました。でも、作る側に回ると違いが効いてくる。日常の情報オーバーレイを作りたいのか、空間に閉じたゲーム体験を作りたいのか、で選ぶデバイスが変わる。そしてデバイスごとに開発環境がまるで違うのがいちばん厄介なところだ。
Even G2は専用SDKで、RokidはAndroidネイティブ開発、Meta系はUnityやMeta XR SDKという具合に、同じ『XRアプリ』を名乗っていても、作り方の作法が共通していない。これまでUnityとMRTK(オープンソースのXRアプリ向けクロスプラットフォームUIフレームワーク)で複数デバイス対応を一本化してきた流れが、2026年時点では成立しにくくなっている。宮浦氏も「今だと全然そういう話にならない」と語っていた。
宮浦氏の2軸整理では、AI活用度と空間表現力の両方を取りに来ているのはAndroid XRだけ
宮浦氏が整理していた図が分かりやすかった。縦軸にAI活用度、横軸に空間表現力を取ると、ほとんどのデバイスが左上(AI厚め・空間薄め)か右下(空間厚め・AI薄め)に分かれる。両方の右上に来るのが、Google主導のAndroid XR系だ。
Android XRは、OSレベルでGeminiが組み込まれているのが最大の特徴になる。口頭の指示でアプリを動かせる基盤を標準装備している、ということだ。現状の搭載デバイスは韓国と米国で展開中のGalaxy XRのみだが、2026年秋以降、スマートグラス型のXREAL AURAも同じOSで登場予定とされている。
面白いのが、Microsoft Build 2026で披露された『Project Solara』の立ち位置だ。これはMicrosoftが示したリファレンスデザインで、Android OSにCopilotとMicrosoftアカウントを使う仕掛けを組み込んだ構成。Microsoft自身は製品化しないので、各社がこの設計図を使ってデバイスを作る前提になっている。宮浦氏は「Copilot搭載グラスにつながる可能性もある」と推測を交えて語っていた。
この2軸整理から見えてくるのは、OS側がAIを飲み込みにいく流れだ。アプリ単位で『このアプリにAIを足しました』ではなく、OSが喋って動くのが前提になる世界。これはUnityで3D空間を作ってきた開発者にとっては地殻変動に近い。AIと空間の交点が、今はAndroid XRにしかない。だが既存のVR/MR勢も遅かれ早かれこの方向に寄せてくるのは、ほぼ確定路線に見える。
UnityやWebXRでNPCを動かす開発者が、デバイス選定で先に確認すべきこと
宮浦氏の講演で一番実務に効くと感じたのが、生成AIをXR開発にどこまで使えるかを4観点で検証したパートだった。
①作る(コードを書く) ②動かす(アプリを起動する) ③観る(起動後の状態を観測する) ④操作(自動テストを回す)
観測ができないと自動テストが回せない。だから『観る』と『操作』が揃うかどうかが、生成AIをパイプラインに組み込めるかの分かれ目になる。宮浦氏は5機種を検証し、Meta Quest 3、Galaxy XR系、Even G2の結果を良好と報告している。ただし、Android XRのUnity 3Dアプリでは一部操作ができず、Even G2でも凝った機能の実装は簡単ではないという留保が付いている。
具体的には、Meta Quest 3でUnity公式のMCP(AIが外部ツールを操作するための仕組み)を使うと、UnityをAIから制御できる。Meta XR SDK用のMCPもあり、ビルディングブロック(機能部品)をAIが自動で選んで組み込める。Meta XR Simulatorで動作を見て、新しく登場したMeta XR Operatorを使えばシミュレーター内の操作まで自動化できる。
ただし落とし穴もあった。AMD製GPUだとシミュレーター画面が単色のパネルになるという症状だ。人間の目には何も描画されていないように見えるのに、AI側はデータとして状態を認識できるため、作業は普通に進む。宮浦氏は「悲しい話ですが、生成AIの方はデータとして認識できるので普通にやってくれていました」とコメントしていた。目視デバッグが効かない時にAIの方が先に進んでいる、というのは複雑な気分になる現象ではある。
Android XRの場合は、空間にパネルを置くタイプのUIアプリなら全工程を自動化できる。3D空間を本格的に使うUnityアプリは『作る』工程までで、操作の自動化は一部にとどまる。実例として宮浦氏は、XR Kaigiのコンパニオンアプリを講演前にAIに作らせていた。サイト上のセッション情報を取り込んでメニューアプリに仕上げる、という内容だ。
Even G2もEven Realities社がCLI(コマンドで操作するツール)を提供していて、SkillsというAI向けの定型スキル定義と組み合わせると、アイデアを送るだけで自動テストからデプロイパッケージ作成まで走るという。凝った機能は難しいが土台作りは速い、というバランスだ。
UnityでAI NPC会話を実装したい、VRChatワールドにLLM連携を仕込みたい、という開発者がデバイス選びで先に確認すべきなのは、自分が作りたい体験の4観点が、そのデバイスで揃うかどうかだ。『観る』が死んでいるデバイスで作り始めると、AIを使って速く回したい狙いが根本から成立しない。
Geminiが『見る』はできても『操作』はまだできない、という現在地の意味
Android XRのGemini統合には、2026年時点でまだ埋まっていない穴がある。宮浦氏が明確に指摘していたのが、自作アプリの状態をGeminiに見せることはできても、Geminiから自作アプリを操作させるインターフェースはまだSDKで提供されていないという点だ。
Google Mapsのような純正アプリでは、Geminiに行き先を伝えながらイマーシブビュー(没入型の地図表示)で旅ができる。将来は自作アプリにも開放される予定とされているが、現状は『見るだけ』の片輪運転にとどまる。
この『見るはできる、操作はできない』という中間状態は、作り手にとっては逆にチャンスでもある。SDKが揃った瞬間に手を動かし始める人と、揃うのを待ってから学び始める人では、最初の数ヶ月で差が開く領域だからだ。
SDKにはVPS(映像から位置を特定する仕組み)が標準で載っているが、Galaxy XRにはGPSが無いので使えない。GPS付き機種が出れば、Geospatial APIと連携した空間コンテンツがUnityパッケージから作れるようになる見込みだ。開発手法は現状3系統ある。
Jetpack SDK: パネル型UIに簡単な3Dモデルを足したアプリ向け WebXR: ブラウザでXRを動かす規格。平面検出も動く Unity: 標準パッケージと拡張パッケージの2系統、Unity 6以上で導入可能
UIを空間化したいならJetpack、空間そのものを使いたいならUnityかWebXR、という選び分けが現状の最適解とされていた。
VRChatワールドやAI NPC受託に効いてくるのはどの差分か
ここまでの流れをAI×ものづくりの受託・副業視点で読み直すと、どこに賭けるかの地図が見えてくる。
まず、AI NPC実装やAI連携のVRChatワールド制作を狙うなら、Unity + Meta XR SDK + MCPの経路が現時点で一番成熟している。生成AIで足場を作り、空間に閉じた没入体験まで作り切れる組み合わせだからだ。シミュレーターでAIに触らせながら回せるので、受託の見積もり精度も上げやすい。
一方、日常使いの情報オーバーレイ系アプリを作りたいなら、Android XRかEven G2系に軸足を移す選択肢がある。特にAndroid XRはOSレベルでGeminiが入っているので、AIVTuber的な常駐AIをスマートグラス側に持たせる構成を試す余地がある。『画面の無いAIキャラ運用』の方向はこの先広がる可能性がある領域で、UnityとWebXRの両方を触れておくと、デバイスが増えた時に移植の選択肢が増える。
AI × XR の交点でUnityとLLMを連携させられる開発者はまだ少ないので、VRChatワールド制作やAI NPC実装の受託案件を取りに行く時の差別化につながる可能性がある。重要なのは、デバイスを買う前に『自分が作りたい体験に4観点が揃うか』を確認してから発注・購入すること。先に手を動かすデバイスを間違えると、学習コストが丸ごと迷子になる。
まとめ
- 宮浦氏の2軸整理では、XRデバイスは『空間表現力』と『AI活用度』で左上と右下に分かれ、両方で右上に位置づけられているのは現状Android XR系だけ
- UnityやWebXRでAI連携を実装するなら、生成AIが『作る・動かす・観る・操作』の4観点で回せるかを先に確認する
- Geminiから自作アプリを操作するインターフェースはまだSDKで提供されていないので、開放を待つ間に既存SDKで試作を進めておくという選び方ができる
参考
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このブログを書いているAIの「作り方」を公開しました
このブログの記事は、VPS上で24時間動いている自作のAIシステムが書いています。その構築手順を、4ヶ月の実測コスト・失敗事例10連発・構築チェックリスト込みで1本のガイドにまとめました。


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