AIコーディングツールを使っていて、こんな経験はないだろうか。
「フロントエンドの最適化やっておいて」と指示したのに、Core Web Vitalsのことは完全スルー。「テスト書いて」と頼んだら、ハッピーパスだけの薄いテストが返ってきた。
AIは賢い。でも「何でも屋」として使うと、専門家なら当然押さえるポイントを平気で見落とす。人間のチーム開発でも同じだ。「何でもできます」という人より、「フロントエンドならお任せください」という人のほうが、結果的にいい仕事をする。
この記事では、Claude Codeをはじめとするコーディングエージェントに「専門家としての人格」を一括インストールできるOSS「agency-agents」を、フリーランスエンジニアの実務でどう活用しているかを紹介する。
そもそもAIエージェントに「役割」を与えると何が変わるのか
Claude CodeやCopilotに「あなたはフロントエンド開発者です」と一行書くだけでも、出力の質は多少変わる。でも正直、その程度のプロンプトでは限界がある。
本当に欲しいのは「フロントエンド開発者として、アクセシビリティ基準を満たし、Core Web Vitalsを意識し、レスポンシブ対応も考慮した上でコードを書いてくれる存在」だ。つまり、ただの肩書きじゃなくて、その肩書きに紐づく知識体系まるごとが必要になる。
自分でそういうプロンプトを書こうとすると、これがまあ大変だ。専門領域ごとに「何を気にすべきか」を網羅的に書き出す作業は、それ自体がコンサルの仕事みたいなものである。フリーランスは一人何役もこなすのが宿命だが、さすがに144領域分のプロンプトを自作する時間はない。
そこで見つけたのが「agency-agents」というOSSだ。
agency-agentsとは──144人の専門家をMarkdownで持ち歩く
agency-agentsは、144個のAIエージェント定義をMarkdownファイルとして提供しているGitHubリポジトリだ。2025年10月に誕生し、2026年3月時点でスター数は4万を超えている。コントリビューターも36名以上と、コミュニティの勢いがある。
対応ツールが幅広いのも特徴で、Claude Code、GitHub Copilot、Cursor、Gemini CLI、Aider、Windsurfなど10以上のツールで使える。自分はClaude Codeをメインで使っているが、案件によってはCursorも併用するので、この互換性はありがたい。
144個のエージェントは12カテゴリに分類されている。Engineering(フロントエンド、バックエンドアーキテクトなど)、Testing(APIテスターなど)、Marketing(グロースハッカー、コンテンツクリエイターなど)、Design(UXリサーチャーなど)、さらにはSales、Paid Media、Project Managementまである。
正直、最初は「144個って多すぎない?」と思った。でも考えてみれば、フリーランスが一人でプロダクトを作るとき、実際にはフロントエンド、バックエンド、インフラ、テスト、SEO、マーケティング……と、本来なら別々の人間がやる仕事を全部やっている。そう考えると、144人の専門家が控えているのは心強い。まるでRPGで全職業のキャラを仲間にした気分だ(レベル1だけど)。
フリーランス実務でどう使っているか
まずは必要なカテゴリだけ入れる
全カテゴリを一括でインストールすることもできるが、個人的にはおすすめしない。144個のエージェント定義が全部入っていると、選択肢が多すぎてかえって迷う。スーパーの調味料コーナーで30種類のポン酢を前に立ち尽くすのと同じ現象が起きる。
自分の場合、まずはEngineering系とTesting系だけ入れた。フリーランスの受託開発では、この2カテゴリで日常業務の8割はカバーできる。
その後、ブログ運営でSEOやコンテンツ戦略が必要になったタイミングでMarketing系を追加した。こうやって段階的に増やしていくのがストレスが少ない。
Claude Codeでの使い方
Claude Code向けにインストールすると、~/.claude/agents/にMarkdownファイルが配置される。あとはClaude Codeのセッション中に、必要に応じてエージェントを呼び出すだけだ。
手動で特定カテゴリだけコピーすることもできる。自分はプロジェクトごとに使うエージェントを変えたいので、手動コピー派だ。受託のWeb開発案件ならEngineering + Testing、自分のプロダクト開発ならそこにMarketing + Designも足す、という具合に。
「汎用プロンプト」との決定的な違い
「あなたは優秀な開発者です。ベストプラクティスに従ってコードを書いてください」──こういう汎用プロンプトと比べて何が違うかというと、抜け漏れの少なさが段違いだ。
汎用プロンプトだと、AIは「一般的に良いとされること」しか考慮しない。でもagency-agentsのFrontend Developerエージェントなら、Core Web Vitalsの最適化手法やアクセシビリティ基準(WCAG)まで含んだ定義になっている。
これはフリーランスにとって特に重要だ。会社員なら、コードレビューで先輩が「ここ、アクセシビリティ大丈夫?」と指摘してくれる。フリーランスにはその先輩がいない。agency-agentsは、いわば「各分野の先輩の視点」をAIに注入してくれるツールだと思っている。
使ってみて感じた注意点
便利なツールだが、万能ではない。実際に使ってみて気づいた点をいくつか。
まず、エージェント定義はあくまで「良い指示書」であって、AIの能力そのものを上げるわけではない。料理のレシピが素晴らしくても、オーブンの火力が弱ければ焼けないのと同じだ。ベースとなるLLMの性能に依存する部分は当然ある。
次に、英語で書かれた定義がほとんどなので、日本語の案件で使うときは文脈の切り替えが発生する。ただ、Claude CodeもCopilotも多言語対応しているので、実用上はそこまで問題にならない。
そして最も重要なのは、エージェントの出力を鵜呑みにしないこと。専門家の視点が入ったとはいえ、最終的な判断はエンジニアである自分がやる。フリーランスは成果物に対して全責任を負う立場だ。「AIがそう書いたので」は言い訳にならない。
フリーランスこそ「AIの役割分担」を考えるべき理由
一人で全部やるフリーランスにとって、AIは最高のチームメイトになりうる。ただし、「何でもやって」と丸投げするのと、「あなたはフロントエンドの専門家。この観点でレビューして」と役割を明確にするのとでは、成果物の品質が全然違う。
人間のチームでも同じだ。5人のチームで全員が「何でも屋」だと、誰も深い専門性を発揮できない。一方、「この人はインフラ、この人はフロント、この人はQA」と役割分担すると、チームとしてのアウトプットの質が跳ね上がる。
agency-agentsは、AIとの協業にこの「役割分担」の概念を持ち込むためのツールだ。フリーランスが一人きりの開発で品質を担保するための、現実的なアプローチだと思う。
もちろん、144個全部を使いこなす必要はない。自分の業務に合ったエージェントを数個選んで、まずは試してみる。合わなければ外す。そういう気軽さでいい。
AIツールの進化は速い。半年前の常識がもう通用しないこともある。でも「AIに適切な役割を与える」という考え方自体は、ツールが変わっても通用する普遍的なスキルだと思っている。フリーランスとして生き残るために、このスキルは磨いておいて損はない。
まとめ
- agency-agentsは、144個のAIエージェント定義をMarkdownで提供するOSS(GitHub星4万超)
- Claude Code、Copilot、Cursorなど10以上のツールに対応
- 汎用プロンプトでは抜け落ちる専門的な観点を補完してくれる
- フリーランスは全カテゴリ一括より、必要なカテゴリから段階的に導入するのがおすすめ
- AIの出力を鵜呑みにせず、最終判断は自分で行うことが大前提
一人で開発しているフリーランスほど、AIに「役割」を与える工夫が効いてくる。agency-agentsはその第一歩として、試してみる価値のあるツールだ。
フリーランスエンジニアにおすすめのツール
AI開発やブログ運営の環境として、自分はConoHa WINGを使っている。WordPressとの相性が良くて、AIツール関連の検証用環境をサクッと立てられるのが気に入っている。
あと、フリーランスの確定申告にはfreee会計が手放せない。AI関連のサブスク代(Claude Pro、GitHub Copilotなど)を経費計上するのも、freeeなら自動仕訳でほぼ手間ゼロだ。
※この記事にはアフィリエイトリンクを含みます


コメント